第8回活動理論学会研究大会のご案内

活動理論学会では、2022年8月6日(土)、第8回活動理論学会研究大会を対面+オンラインで下記の通り開催いたします。ご関心をおもちの皆様のご参加をお待ちいたしております。
●日時: 2022年8月6日(土)10:00–16:45
●参加費: 無料
●場所: 関西大学 千里山キャンパス 尚文館 5階 502号室 対面とオンラインのいずれでも参加可
https://www.kansai-u.ac.jp/ja/about/campus/
※ 尚文館は、千里山キャンパスマップの⑥の建物です。正門を入って左の法文坂を上がり、⑦の以文館と向かい合っている側にエントランスがあります。このエントランスから入った階が3階になります。
●主催: 活動理論学会
http://www.jarat.org

●プログラム(敬称略)
研究発表

司会: 冨澤 美千子(横浜美術大学)

10:00-10:30
山住 勝広(関西大学)
第四世代活動理論と拡張する学校の創造
コロナ禍は、交換価値(個体主義的・競争主義的な私的利益)への教育の還元によって最初に過酷な打撃を被るのが、脆弱(vulnerable)な家庭やコミュニティの子どもたちであることをはっきりと可視化させた。他方で、そうした交換価値に還元された教育を超えて、相互扶助とケアと自由な連帯の原理、すなわち使用価値に拠って立ち、教科の学習を共に生き合う生き方の学びと結合して、いわばコモンズ(共有財産)を協働して創り出していくような学校教育が、危機の時代にあってかつてないほどリアルに求められてもきている。本発表では、第四世代活動理論の新たな研究枠組みにもとづき、学びの使用価値を再発見して創造していく学校の拡張とは何かについて検討していきたい。

10:30-11:00
上田 真未(関西大学大学院)
作文教育における『書くこと』のエージェンシーと活動システムの比較―野村芳兵衛の綴方教育と欧米のライティング・ワークショップを比較して
本発表の目的は「拡張的学習」(expansive learning)論における活動システムのモデルにもとづき、作文教育における子どものエージェンシーを比較、分析することにある。対象は、野村芳兵衛の綴方教育と、欧米のライティング・ワークショップである。OECD(経済協力開発機構)のEducation2030プロジェクトと結びつけるならば、これからの作文教育カリキュラムは、他者との関わりの中で子どもの「意欲を喚起するようにデザインされるべきである」。この観点も用いながら、比較と分析を進めたい。

11:00-11:30
森川 由美(四国学院大学)
校内研究が学校文化を変える
各学校における校内研究は、指定校として委託を受けた期間のみの「単発」的な取り組みで終わりがちである。神奈川県内A中学校では、市より委託を受けて2015-16年度の2年間、および、2019-2021年度の3年間、校内研究に取り組んだ。本発表では、A中学校の校内研究が「単発」的な取り組みに終わらず、生徒間・教員間・生徒―教員間を含んだ学校文化を変えるという取り組みになった要因について、文化歴史的活動理論を用いて分析・説明する。

11:40-12:10
浅野 𠮷英(豊岡短期大学)
地域を学び場とする三重県立飯南高等学校の教育改革―カリキュラム専門家としての関わりのなかからの分析と考察
三重県立飯南高等学校(全日制総合学科)の学校改革はどのように展開したのか。また、変革の中枢にいた校長が学校を離れた後も、校内に残る変革のエイジェンシーを共有する教員や学校と連携することで活力を得た地域社会と学校が、今後、どのような仕組み、実践をつくることで変革を継続してゆくことができるのかを考察する。

13:00-13:30
吉澤 一弥(日本女子大学)・根津 知佳子(日本女子大学)
『ウィリアムズとその家族の支援』活動における協働の変容
20年間にわたる「音楽キャンプ」と、課題解決ミッションである「異分野連携プロジェクト」の2つの活動システムの4年間の協働の変容を活動理論から分析した。ウィリアムズの視空間認知課題を投影法心理テストを用いて解明したところ、「図と地」のゲシュタルトの未分化な構造が明らかになった。それ以降「図と地」に焦点化したツールとして音楽療法家Boxillの「覚識の連続体」概念をはじめ、活動にかかわる多分野の専門家(工学、幼児教育学、精神医学、構成学、発達心理学など)から、さまざまな支援のコンテンツがツールとして導入された。ウィリアムズの特性(認知発達の遅れ、社交的で、音楽的親和性)や年齢・生活実態に沿った支援ツールの創出プロセスを例に、第一の矛盾、第二の矛盾の解決への構造をお示ししたい。

13:30-14:00
渡辺 楓(関西大学大学院)
活動理論の視点から考える現行の外国語授業の問題点・可能性
令和2年度から新小学校学習指導要領(文部科学省, 2018)が全面実施され、小学校5、6年生の外国語が教科化された。このような小学校外国語教育の改革の中で、公立小学校の現状を参与観察している。そこで実践されている活動を、活動システムを用いて考察する。主体である担任教師と、対象である児童との間に起こる関わり合いの中での、児童の反応を客観的に理解することで、学級に閉じこもった閉鎖的な活動の現状を捉えることができた。この実践分析をもとに、現状の外国語科の問題点と拡張の可能性について論じていきたい。

シンポジウム
14:15-16:45
変わる専門職像とプロフェッショナル・ラーニングの現在
浅野 貴博(ルーテル学院大学)「ソーシャルワーカーとしての学び―プロフェッショナル・ラーニングの視点から
堤 崇士(グロービス経営大学院)「実務家教員の学習コミュニティ:ビジネススクールにおける実務家教員養成の取り組み
山住 勝広(関西大学)「拡張的学習としてのプロフェッショナル・ラーニング教師の変革的エージェンシーを形成する校内研究の取り組みを事例として
ユーリア・エンゲストロームは、Expertise in Transition: Expansive Learning in Medical Work(Cambridge University Press, 2018)の中で、変わる専門職像を、「専門性の協働的な性格」と「変化を引き起こすプロフェッショナル・ラーニング」という二つの軸での拡張が交差するところに見いだそうとしている。つまり、彼は、現在の専門職像と専門性が、「活動システム」「ノットワーキング(結び目づくり)」「拡張的学習」という三つの先端において転換しつつあり、そこには「協働して変革を起こす専門性(collaborative and transformative expertise)」という新たな専門職像が登場してきている、とするのである。本シンポジウムは、活動理論学会に所属する、異なる三つの専門分野の登壇者により、プロフェッショナル・ラーニングの現在に焦点化した境界横断的な協働の議論を、活動理論を共通言語として媒介することによって進めてみようとするものである。

●参加のお申し込みは、対面参加もしくはオンライン参加の別を明記の上、活動理論学会事務局 purela.kansai [a] gmail.com([a]を@に変えてください)までお願いいたします。